縁あってボリビアの市場へ事業展開 ~マックス建材株式会社~

Ⅰ ボリビア日系人の母国への想いに共 感した屋根材の販売

当社マックス建材株式会社は横浜市港 北区で金属屋根を製造する会社であるが、 ボリビアのコロニア・オキナワ生まれの 知花賢伸と賢正の兄弟が経営する有限会 社 K&K 板金工業との縁により、ボリビ アへ金属屋根を販売する事業を展開して いる。賢伸はボリビア・サンタクルス市 のガブリエル・レネモレノ自治大学獣医 学部を、賢正はペルーのヴィジャレアル 国立大学歯学部を卒業するも、折から南 米を襲ったハイパーインフレの中で、日 本への出稼ぎを決意し、賢伸が 1989 年 2月に来日して板金の仕事を学び、追っ て賢正も来日して、二人の名前を取った K&K 板金工業を起こしていた。その当 時から親交を結ぶことになったのが、ガ ルバリウム鋼板製※の金属屋根を製造す るマックス建材の榎本浩康社長である。 榎本は知花兄弟の母国への想いに共感し、 重く割れ易いレンガ色の粘土瓦やすぐに 錆びるトタン屋根が多いボリビアに、軽 くて丈夫な金属屋根を普及することを決 意した。※耐食性、耐熱性、加工性などに優 れたアルミニュウムや亜鉛の合金メッキ鋼板。

マックス建材と K&K 板金工業は、 JICA の中小企業海外展開支援プログラ ムを活用して、「基礎調査」としてボリ ビアの屋根市場を調査すると共に、「日 系研修」として知花兄弟の甥とその友人 を 10 カ月にわたって受け入れ、金属屋 根の製造と施工について学ばせた。その 研修の中で、知花の甥とマックス建材の 社員でもある榎本の姪とが出会い、後に 結婚して、一児をもうける。現在は、二 人はボリビアと日本双方を拠点に、マッ クス建材の社員として金属屋根のボリビ ア展開にも関わってくれている。 ちなみに現在、我々のボリビア進出を 支えてくれているオズワルド・ウヨア・ レネモレノ自治大学元副学長は学生時代、 知花兄弟の両親が経営していたサンタク ルスの定食屋の常連客で、六法全書を抱 えながら店に通い、その後、同大学の後 輩となる賢伸と親交を結んで、現在も支 援を惜しまない。

写真1-1 左から榎本浩康、ウヨア元副学長、知花賢伸、筆者(サンタクルスで)

当社は韓国や台湾には既に実績を有し ているが、飽和したアジア市場よりも、 遠く離れた地球の反対側、日本の金属屋 根屋にとって未開発な、そして知花兄弟の故郷でもあるボリビアへの展開は魅力 的であると考えている。JICA から「案 件化調査」としての支援も得て、具体的 なボリビア展開を目指し、ルートを開拓 しているところである。

◆ボリビアの建築における屋根市場調査

ボリビア最大の市場となるボリビア第 二の都市サンタクルスの屋根事情を俯瞰 すると、日本でスペイン瓦・洋瓦と呼ば れる伝統的なレンガ色のコロニアル瓦が 多くを占めていることが分かる。コロニ アル瓦は重く、焼成温度が低いと割れや すく雨漏りの原因ともなり、表面も劣化 が進むと苔などが生しやすい。また、ラ パスやコチャバンバでは、コロニアル瓦 に加えて、日本でも昔使われたトタン屋 根(亜鉛メッキ鋼板)やそれに 5%のア ルミを加えたガルタイト(溶融亜鉛 5% アルミ合金めっき鋼板)が主流で、これ らの素材に細かい波形をつけて強度を持 たせているものが多い。

トタンに比べればガルタイトは錆び難 いが、我々はさらに強度があって色落ち せず、超長期にわたって錆びることがな いガルバリウム鋼板をボリビアに提供す るため、市場調査を続きてきた。ガルバ リウムは、アルミ 55%と亜鉛 43%によ る合金めっき鋼板で、弊社製品は「マッ クス瓦」の名で 30 年保証をつけて提供 し、国内では 10 万棟を超える実績があ る。マックス瓦はさらに、業界トップの 0.62mm の板厚で変形し難く高い耐久性 がある上、含有量80%以上のフッ素樹脂 塗装を付すことで、極めて高い耐候性、 耐食性等を生み出し、屋根の美しさを長 期にわたって保つことが評価されている。

写真1-2サンタクルスに多いコロニアル瓦、
写真1-3 首都ラパスの錆びたトタン屋根

この 5 年の間にボリビア市場でも中国 製のガルバリウム屋根材が散見されるよ うになったが、マックス瓦の半分ほどの 板厚で変形しやすい上、金属の特性とし て極めて硬いガルバリウムは曲げやプレ スの成形過程でクラック(割れ目)を生 じ易いことから、製造段階で曲げ部分が ひび割れた製品も多い。また、取り扱い の粗雑さから市場に提供する過程で傷が 着けられている製品も多く散見される。 風雨にさらされる金属屋根は、塗膜が剥 がれたクラックや傷から確実に錆が進む ことから、日本の市場ではこのようなク ラックや傷は絶対にあってはならないこ とである。弊社製品は、誰でも製品を安全に毀損することなく扱える最適サイズ (全長 1970mm 全幅 473mm)としてお り、さらに関係者は製品を梱包、緩衝材 を挟むなど、製品の扱いに細心の注意を 払っている。

アジアでも中南米でも開発途上国の建 築業界では、技術者、職人たちの職種が 日本ほどに特化しておらず、ボリビアで も少し器用な職人がコロニアル瓦も葺け ば、レンガ積みもやることがある。その ため、屋根の雨漏り修理を引き受けて、 その部分は修繕できても、無造作に屋根 を歩き回ることで、新たな雨漏りを誘発 する話は枚挙にいとまがない。マックス 瓦は、その強度から職人が歩き回っても 全く問題ないが、その上で金属屋根の施 工に関する必要最小限の技術指導は必要 であり、ボリビア市場への参入の際には、 技術移転を同時並行して展開していく必 要がある。そのための、スペイン語の施 工マニュアルの整備やスペイン語字幕の 施工動画作成も進めているところである。

写真1-4 当社のフッ素加工したガルバリウム鋼板4色のマックス瓦

◆マックス瓦のビジネス展開

延べ 5 年に及ぶ市場調査で、潜在的な金 属屋根の需要はラパスやコチャバンバが より大きいものと見込まれるものの、先 ずはサンタクルスを拠点として弊社主力 商品マックス瓦の PR と営業展開を図る こととした。その背景、理由としては、

①知花兄弟の地元で、地域を理解し人的 ネットワークがあること

②ハイスペックで、価格的にも廉価では ないマックス瓦のターゲットを、最大の 経済都市サンタクルスの一定以上の所得 者層と定めたこと

③サンタクルスの人々はより開放的、先 進的でかつ高級志向である、言い換えれ ば新しい物好きで、見栄っ張りだと考え られること 最後に、

④知花兄弟の人的ネットワークも奏功し て、現地代理店となるパートナー候補が 得られたことである。

当面、マックス瓦のPRと営業展開は 現地代理店を通じて行い、速やかにマッ クス瓦を使った新規住宅建設や既存住宅 のリフォーム・改修の実績を得たいと考 えている。その1棟目がモデル・ハウス であり、サンタクルスの人々が実際に高 品位・高機能の金属屋根を目にすること が重要であると考えている。「百聞は一 見に如かず」の例え通り、モデルハウス によって伝統のコロニアル瓦とも中国製 のガルタイトやガルバリウムとも違うハ イスペックな金属屋根を見てもらうこと が最大のPRとなる。これらの実例を見 ることで、ボリビアで多く聞かれる「金 属屋根は暑くなる」「雨音がうるさい」 「赤く錆びやすい」との不安を払拭でき ると確信するからだ。

そして、輸出入ベースの市場展開が更 に進めば、工場進出もあながち夢ではな くなる。既に開発が進むサンタクルス郊 外の「ラテンアメリカ工業団地」に土地 も確保され、一部機材も搬入しているか らだ。中長期の構想ではあるが、内陸国 ボリビアでは競争力を得るために現地生 産へと進むことが必須で、パートナー候 補もそれを強く望んでいる。

2023年2月下旬、サンタクルスで、 午前中は建材業界のビジネスグループ、 午後は高等職業訓練校の最上級生達を対 象とした技術セミナーを開催した。参加 者はこれまでのイメージとは異なる金属 屋根に衝撃を受けた様子で、サンタクル スへの早期の入荷を待望する声が口々に 聞かれた。

また、技術者からはボリビアになかっ た金属屋根の切断や加工の技術に驚嘆の 声も聞かれた。そして、セミナーでは最 後に施工者の安全確保の重要性を動画で 説明した。ボリビアでは、高所からの転 落等の死亡事故が公になっているだけで 年間2,000件以上発生しているからだ。 「安全は全てに優先する」概念のこの国 への定着も、我々の使命である。

このセミナーで修了証を贈呈した若き 技術者たちが、いずれマックス瓦を活用 してくれることは、我々の期待であり、 楽しみである。いつか、これらの点と点 がつながって、この国の安全で豊かな住 生活環境に結びつくことを願いながら、 サンタクルスでのビジネスを進めている ところである。

写真1-5 2023年2月の金属屋根技術セミナー

Ⅱ 「Viento Boliviano」ボリビアの風 プロジェクト

単に日本からボリビアに輸出するだけ でなく、ボリビアの製品も日本にご紹介 し、販売したいと「ボリビアの風」プロ ジェクトを立ち上げ、ボリビアワインや シンガニの輸入を始めた。ボリビアのワ イナリーやその歴史、背景や現状などを ご紹介したい。

図1-1 当社「ボリビアの風」プロジェクトロゴ

◆新大陸へワインを伝えたキリスト教

ワインが世界中に広まる背景には、キ リストが最後の晩餐でパンをとって「こ れが私の体である」、ワインの杯をとっ て「これが私の血である」と言って弟子 たちに与えたことがあるという。ワイン はキリスト教の世界伝播とともに広まっ ていったものと思われ、多くの聖職者ら によってキリスト教と共にぶどうの苗と ワインづくりの技術が広がった。アメリ カ大陸では、メキシコでぶどう栽培が始 まり、それがチリやアルゼンチンなど南 米大陸や北米カルフォルニアに伝わって いる。ちなみにシャンパンの名品「ド ン・ペリニヨン」もワインの瓶内発酵を 発見したシャンパーニュ地方ベネディク ト教会修道士の名前を冠したものである のは興味深い。今を時めくカルフォルニ アワインも、最初に手がけたのは修道士 であり、日本で最初にワインを飲んだの は織田信長と言われているが、それはイ エズス会のフランシスコ・ザビエルの献 上品であった。赤ワインの tinto が変じ て珍陀酒(ちんたしゅ)と呼ばれていた ようだ。日本酒が神への豊穣の感謝や清 めであることを思えば、ワインが神聖で キリスト教神事に欠かせないものである ことは理解できよう。

◆ワインのニューワールド

「おいしいワインの事典」(成美堂出 版)によれば、ワインの世界地図はヨー ロッパとニューワールド(新大陸)に大 別される。ヨーロッパ伝統の生産国は、 フランス、イタリア、スペイン、ポルト ガル、ドイツ、オーストリア、ハンガリ ー、ギリシャ、スイスなどである。それ に対してニューワールドは、昔ヨーロッ パの植民地だった国が多く、ぶどう栽培 やワインづくりは入植者やキリスト教修 道士によってもたらされていることは前 述したとおりである。代表的なのはアメ リカ大陸の米国、カナダ、チリ、アルゼ ンチン、大洋州のオーストラリア、ニュ ージーランド、そして南アフリカだ。こ れらの後発国は、広大な土地、年々進化 する技術、低廉な人件費等を活かして安 いだけでなく、高品質なワインを量産し ているという。世界中に多々あるワイ ン・コンテストでは、ヨーロッパもニュ ーワールドも区別なく、毎年激しくしの ぎを削っていることからも、ワインの世 界の進化と競争の激しさが理解できる。 ボリビア・ワインの生産は後述するよ うに 200 年ほど前にチュキサカ県カマル ゴ(Camargo)Cinti 渓谷で始まったとい う。 現在の南米における年間生産量を見ると、 アルゼンチン(1,499千トン) チリ(1,214千トン) ブラジル(274千トン) ペルー(73千トン) ウルグアイ(72.5千トン) ボリビア(10千トン) パラグアイ(1.5千トン) の順位でボリビアの生産量は多くはない が、それだけ希少なワインともいえよう。 (ちなみに、日本の生産量は 85 千トン である。) 弊社「ボリビアの風」は、 あえてマイナーなボリビアワインの輸入 と普及に挑んでいるところだ。 南米ワイン生産国の両雄となるチリと アルゼンチンは、アンデス山脈を挟んで 異なる自然環境でぶどうを育み、ワイン づくりを行なっている。チリは地中海性 気候に似て、収穫前後に雨が少なく、良 質なぶどうを育てることができる。また、 フンボルト海流からの冷たい風により気 温が上がることなく、酸味を感じるシャ ープな味わいに仕上がるという。また、 オーナーの出身国によりフランス的、ス ペイン的、イタリア的と異なる特徴のワ インが生まれることも興味深いところだ。 対するアルゼンチンには、アンデス越え の乾いた風が届き、降雨量も少なく、乾 燥した気候となることから、長い日照時 間と相まって果肉が厚く、タンニンや栄 養分が豊富なぶどうが育つという。また、 昼夜の寒暖差も 20 度と大きいことから、 ぶどうに引き締まった酸味が生まれると いう。 ボリビアワインの産地である南部タリ ハ(Tarija)やサンタクルス州中部のサ マイパタ(Samaipata)も、アンデス山脈 の東側に位置し、アルゼンチンに近い環 境と見ることができる。標高 1500m か ら 2500m の荒々しい大自然の中で育ま れるぶどうは、適度なストレスを受けて 豊かな果実を生み、優れたワインへと形 を変えていく。そのようなボリビアワイ ンを日本のワイン好きに是非知ってもら い、味わってもらいたい。

◆中南米の蒸留酒

南米にはチリやアルゼンチンなど世界 に誇れるワインがあり、また、ドイツ系 移民などが継承してきたビール造りがあ る。ボリビアのビール・パセーニャ (Paceña)も世界ビールコンテストで優 勝したことで、案外、世界にその名を知 られている。これまでワインなど醸造酒 を語ったところで、目を蒸留酒に転じて みよう。 南米の代表的蒸留酒と言えば、竜舌蘭 か ら 作 る メ キ シ コ の 酒 テ キ ー ラ (Tequila)。1949 年の全米カクテルコン テストでテキーラベースのマルガリータ が優勝したことで、世界中に知られるよ うになったという。そして、中米を中心 に広く飲まれているのが、サトウキビを 原料としたスペイン語名のロン(ron)、 ラム酒である。ロンは、蒸留製法や熟生 の方法もいろいろあり、色も香りづけも 多種多様なので、価格の幅も大きく、良 いものは数万円する。同じサトウキビ原 料となるブラジルのカシャーサは、一部 の古酒を除いて無色透明で比較的早出し の蒸留酒となるので、価格の幅は小さく、 カイピリーニャ(caipirinha)など果汁と 合わせて飲むことが多い。 一方でボリビアには、アレキサンドリ ア・マスカットを原料とするシンガニが あり、ペルーにもマスカット他のぶどう を原料とする蒸留酒ピスコ(pisco)があ る。現在は自動車燃料としても使われる サトウキビに比べると、随分と高価で贅 沢な原料ではないだろうか。 シンガニはボリビアの大衆的な酒場で 一般的に飲まれる酒であり、主に 「Chufly」と呼ばれるシンガニ、炭酸、 ライムのカクテルが飲まれている。ちょ うど日本の「チューハイ」とよく似た味 であるが、ベースがマスカットを原料と する蒸留酒なのでチューハイよりくせが なく美味しい。個人的には、「シンガニ は学生がコーラで割って飲む酒」と以前 から聞いていた先入観もあり、安価な酒 のイメージであったが、じっくり味わえ ばなかなか奥の深い蒸留酒である。その ままでも十分美味しく、イタリアの grappa と比べても引けを取らない。が、 カクテルにすれば可能性はさらに大きく 広がる。我々は、ボリビアワインととも に、このマスカット原料の蒸留酒シンガ ニを少しでも日本の方々に知ってもらお うと取り組み始めた。

◆YOKICHIワイナリーとの出会い

当社が 2017 年から K&K 板金工業と ともにボリビアへの金属屋根普及に取り 組む過程でサンタクルスから車で 2 時間 ほどの高原地帯サマイパタにある平均標 高 1750m のぶどう畑から生み出される ボリビアワイン「1750」と出会い、2019 年から輸入を開始した。日本の工業製品 をボリビアに売るだけでなく、ボリビア 製品を日本に広めることも企業としての 役割であり、親日的な国ボリビアとの持 続的な関係を構築することが大切である との思いからだ。

写真1-7サマイパタ産のボリビアワイン「1750」

醸造元 UVAIRENDA が生み出す 「1750」は、海外にも輸出され、ボリビ アのスーパーにも陳列される言わばメジ ャーなワインで、赤4種、白2種とロゼ のラインアップを揃える。「1750」ワイ ンをボリビアの民芸品とともに日本国内 でネット販売していたが、空輸であった ために大量のストックはなく、追加の輸 入も折からのコロナ禍により順調にはい かなかった。さらに昨年、醸造元から独 占販売権の提案もあったが、最低輸入量 の縛りも大きかったので、「1750」ワイ ンの継続的な輸入から舵を切ることとし た。 そして出会ったのが YOKICH ワイナ リーである。日本人の名前「与吉」を想 起させるそのワインは、フルーティーな 白と飲み易い赤が印象的だったが、何よ りもともに生産されるシンガニ「Tierra Alta」は改めてボリビアを代表する蒸留 酒の力と可能性を感じさせるものであっ た。当然ストレートでは強い酒だが、口 の中に広がるアレキサンドリア・マスカ ットの風味、口から鼻に抜ける爽やかさ、 喉ごしの透明感など、シャープでフルー ティーなこのボリビアの蒸留酒をぜひ日 本で広く知ってもらいたいと感じた瞬間 であった。

写真1-8 新たに輸入するYOKICHのシンガニとワイン 金色の原産地証明が付く

◆YOKICHのワインとシンガニ

新たなパートナーとなる創業 1870 年 のワイナリーYOKICH は、ボリビア最 大のワイン生産地でアルゼンチンとの国 境に近い南部の街タリハから北へ車で 3 時間ほどのカマルゴ(Camargo)にあり、 タリハ県ではなく北側のチュキサカ県 (Chuquisaca)に属する。改めてわかった のは、ボリビアのワイン生産は 200 年ほ ど前にこのカマルゴ Cinti 渓谷で始まっ たことだ。そのあとに人口の多いタリハ でもワインが作られるようになり、タリ ハがボリビア最大のワイン出荷量を誇る ようになる。それ故に、タリハのワイナ リーの歴史は 100 年ほどである。カマル ゴ Cinti 渓谷のワイナリーは多くはない が、伝統への誇りと厳格な生産管理を徹 底しており、ワイン職人やソムリエが参 加する「渓谷規制委員会」(VALLE CONSEJO REGULADOR)が組織され ている。毎年生産されるワインとシンガ ニの中で、厳しい基準を満たしたものだ けに「Cinti 渓谷原産地証明」(金の丸ラ ベル)をつけ、そこにはボリビアワイン 発祥の地の表示も併記されている。 2023年2月にCinti渓谷のYOKICHワ イナリーを訪れた。標高 2500m にもな る高原は、夏とはいえ冷涼で乾いた空気 に包まれ、過ごし易い。YOKICH の契 約農家である Sonia Marquez さんのぶど う畑を案内された。ぶどうの栽培には、 「ぶどう棚方式」と「生け垣方式」があ るが、ボリビアではフランス同様に手間 はかかるものの、ぶどうがしっかり根を 張り、土壌からの養分が吸い上げられや すい生け垣方式が採用されている。さら に、ここでは大きな木にぶどうのツタを 絡ませる伝統の栽培法も併用されている。 100 年生きるというぶどうの樹を親から 子へと大切につなぎ、より自然に近い形 で育んでいく。今注目される森との共生 を大切にする農業、アグロ・フォレスト リーを先取りした様な栽培法だ。 YOKICH の直営ぶどう畑は大自然の 荒々しさそのままの Cinti 渓谷に広がる 7ヘクタール。アレキサンドリア・マッ ス カ ッ ト か ら 作 ら れ る 白 ワ イ ン 「MOSCATEL」、ヨーロッパから来て Cinti 渓 谷 に し か な い 赤 ワ イ ン の 「MISIONERA」、やはりCinti渓谷だけ で作られる赤ワイン 「VISCHOQUEÑA」と、日本のワイン 愛好家もあまり聞きなれない個性的なラ インナップが目を引く。 3 月半ばには、20 人ほどの村人の手を 借りて、4 日ほどで収穫を行い、8ヶ月 かけて発酵、熟成させる。我々「ボリビ アの風」は、伝統を守り、信頼されるも のを作ろうとする YOKICH の姿勢を評 価し、マイナーなボリビアワインの中で も、さらに個性的な YOKICH のワイン を広めようと共に歩み始めた。 アレキサンドリア・マスカットから 生まれる蒸留酒シンガニは、YOKICH から「Tierra Alta」の名で生み出され、 蒸留の回数で味も値段も変わってくる。 黒ラベルは 2 回の蒸留で 2~3 年の熟成、 金ラベルは 3 回の蒸留で 5 年かけて熟 成させる。手間もかかるが、蒸留のた びに味に深みが生まれ量が少なくなる ので、当然価格も上がり高級品になっ ていく。これらは「学生がコーラで割 って飲む酒シンガニ」とは別物なのか も知れない。シンガニの製法は、スペ インがこの地を領有した 450 年前に宗 教的な要請により伝えられたという。 まさに、キリスト教修道士たちによっ て宗教的儀式にご用立てられたのであろ う。YOKICH ワイナリーの人々と接し て、伝統を守って高品質なワインとシン ガニを真摯に作ろうとする彼らのたゆま ぬ姿勢に、そのような宗教的とも言える 使命感を感じたのは私だけだろうか。 マックス建材でボリビア産品を紹介・ 輸入する「ボリビアの風」チームは、一 歩ずつだがこれらワインやシンガニを学 び、日本の市場にも目を配りながら、ボ リビア・ワインとシンガニを広める準備 を行っている。いつか、ボリビアからや ってきたこれらの産品が街のバーや酒屋 に並ぶことを夢見ながら (終わり)

写真1-9 契約農家Sonia Marquezさんを囲むYOKICHのFannyとVeronica Mendoza Moron母娘
写真1-10 YOKICHワイナリーのシンガニ蒸留装置

マックス建材株式会社のホームページはこちらで す。https://www.maxkenzai.co.jp

ボリビアワイン「1750」は下記より購入できま す。「ボリビアの風」のワインとシンガニの取扱い状 況については、当社のホームページ にて随時お知ら せします。 https://www.maxkenzai.co.jp/boliviawine/

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