映像のマルチカンパニー:株式会社アルジー

1.アルジーの業務内容

当社は、映像の入り口である撮影から始まり、編集、音処理、それを電波に乗せて放送として衛星に送るアップリンク(uplink)、中継車を使って現場から内外の放送局などへ伝送する中継まで、放送に関わる映像技術全般を網羅する業務を行っています。編集室、MA室(音声編集)送出センター(Playout)、テレポート(衛星伝送地球局)、SNG(衛星伝送車)、OBバン(制作中継車)、撮影・収録、大型LEDスクリーンなど映像の入り口から出口までの業務を行うインフラを整備しています。

特に、当社の特徴として映像伝送用の大型中継車を数多く保有している点にあります。日本では映像用の中継車を持つ会社は大きく2つに分かれ、放送局系列とそうでないアルジーのような会社に分けられます。(中継車はこの他携帯電話用・災害対策用もありますが特殊用途のため割愛します。)

放送局系列が持っている中継車の電波免許は、放送に用途を限定した電波免許が付与されているため、それ以外のサービスには使用できません。他方、アルジーに付与されている免許は用途限定が無いため放送にもその他サービス用の伝送にも使用できるため、オリンピックなどの国際映像中継にも使用可能です。そのため海外の放送局が日本から自国に映像を送る際にアルジーの中継車やテレポートを利用します。海外の衛星を受信して海外から日本に伝送される映像をテレポートで受信して中継し、国内の拠点まで伝送する業務も行なっています。

これはラグビーワールドカップの時も同じで、アルジーは当時所有していた衛星中継車4台をフルに駆使して世界中に電波を届けておりました。

写真1-1 アルジーグローバルテレポートセンタ

アルジーには世界からオリンピックなどスポーツイベントに参加する各国の放送局が独自に日本で取材した映像を本国に送るという仕事があります。そのような仕事は海外通信社または放送局から当社が直接受注して中継を行います。

日本から海外に映像を送るためには会場などから韓国や中国などの日本近隣の国に対しては直接伝送できるのですが、それ以上遠い国に送るにはアルジーが所有する長距離伝送用の中継設備を使用する必要があります。現在では、日本では放送局以外ではアルジーが最大級の衛星中継車保有会社(映像系)となっております。

また、派生事業として海外の衛星放送をホテル客室やパブリックスペースで見ることができるようにする事業や、海外から日本に来る撮影クルーのために諸々のアテンド業務を行い、撮影機材の手配から撮影地選定、移動、宿泊などのロジスティックスから通訳、翻訳などの手配業務など、サービスを拡充しています。

2.アルジーの実績

日本で行われるスポーツゲーム、F1などのモータースポーツレース、音楽コンサート、舞台演劇、など様々な文化イベントについては撮影部分と中継部分を担います。2020東京オリンピック(開催はコロナ禍で延期になり、2021年開催)の公式国際映像の衛星中継を担当し、オリンピック・パラリンピックの国際映像伝送も担当しました。

写真1-2 東京オリンピック競泳会場での中継

国によっては自国の選手だけの様子を中継するために中継車を別途手配して伝送するようなことも行われており、その他にも東京の街を紹介するビデオを撮影して伝送する仕事も受注しました。

写真1-3 東京オリンピック閉会式の中継

2023年に行われましたワールドベースボールクラシック(WBC)ではAmazonの配信用の伝送を担当し、香港まで送信してから全世界に配信されました。

その他、ゴルフ、サッカー、バレーボール等の日本で行われる国際大会では公式国際映像伝送担当として使われています。

写真1-4  スポーツ国際大会の撮影

スポーツや演劇、コンサートなどの文化部門だけではありません。G7 やG20サミット、海外要人来日の際の生中継や取材映像伝送などの政治イベントも業務範囲です。今回の広島サミットでも当社の撮影から伝送までの一貫した業務を多くの国の放送局にお使いいただきました。

写真1-5  G7広島サミットでも撮影から伝送まで多くの国の放送局で使っていただきました。

3.南米における当社のビジネス

日本とボリビアとの間の衛星放送中継の将来性や、ボリビアの放送事情について少しご説明致します。

世界のテレビ方式には大きく分けて2つの方式があり、ヨーロッパ中心の「PAL」(Phase Alternative Line)と呼ばれる方式とアメリカや日本などが中心の「NTSC」(National Television System Committee)方式に分けられます。この呼び方はアナログ時代のもので、高画質化したデジタルHDでは1秒間に何枚の画像が伝送できているのかによってPAL圏では「50i」、NTSC圏では「60i」と呼ばれる方式が主に使われています。

ボリビアを含む中南米地域ではNTSC方式でTVが開始され、現在は60iが採用されています。これは、日本と同じ方式であり、日本の地デジTVの伝送方式と同じものを採用しています。ボリビアと日本はTV方式について親和性があるため、日本のコンテンツをボリビアに、ボリビアのコンテンツを日本にといった交流が大変やり易いと思われます。

ボリビアの選手が参加する陸上競技(100m走や競歩)や競泳の中継も担当しましたので、ボリビアの方々にオリンピックの映像を届けられたかと思います。

ボリビアと日本は互いに地球の反対側であるため、直接電波を届けるのが難しい超遠距離なのですが、現在では通信衛星などを使って電波を届けることが可能です。例えばアメリカのインテルサットという会社のIS20号機という衛星は、ヨーロッパ、アメリカ東部、南米地域などをカバーできる衛星でありながら、日本にも電波が届くという地球の半分をカバーする高性能な衛星です。こういった衛星を使えばボリビアから日本、または日本からボリビアに衛星経由で電波を届けることが可能になります。

現在、ボリビアのオキナワやサンファンの移住地などでは、NHKの国際放送が視聴されていると聞き及びます。これらの両移住地のほか、サンタクルス、ラパス、コチャバンバ等の3大都市の他、日本の3倍という広い国土を持つボリビア各地に居住しておられる約1万4千人の日系人・日本人の皆さんと、約1200万人のボリビア人の方々が、オリンピック以後もこれまで以上に日本発の映像中継放送を共に楽しんで頂けるように、当社も微力を尽くしたいと思っております。

当社とボリビアを繋ぐ架け橋と致しましてはボリビアのテレビ放送を日本で視聴できる様にお手伝いさせて頂く事は可能かと思います。今後、在日本ボリビア人に取り貴重な情報元及び娯楽になると思います。ボリビアと日本とが相互に衛星放送中継を通じて映像をやり取りすることが実現し、両国間の友好親善が更に深まることを期待しております。

4.ボリビアとの縁について

最後に当社とボリビアとの縁について述べたいと思います。私の母方の祖父の秋山玉吉は、南洋経済懇談会常務理事として、現在の一般社団法人日本ボリビア協会の前身である旧「日本ボリビア協会」の1954年(昭和29年)の設立総会で、理事の一人として名を連ねていることはカントゥータ44号でも述べた通りです。このような70年近い前に遡る昔のご縁に導かれて、今、協会の維持法人会員として、また「ボリビアと日本を繋ぐ企業」としてここに寄稿させていただきましたのも、祖父が導くご縁かと思っています。        (終わり)

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当社のホームページは以下の通りです。

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